あなたは自分が一時間にどのくらい稼いでいるか知っていますか?
少なくても、炎上プロジェクトで死ぬほど残業した経験のあるエンジニアは、俺の時給って絶対最低賃金以下だよなあ・・・と思った経験はあると思います。私もそうでしたから。
時給がもしも最低賃金を下回っていたら・・・
そんな最悪の事態を避けるためにも、自分の時給を計算し、最低賃金と比較してみましょう。
この記事では月給や年収を時給換算する方法や、最低賃金を下回っていないかチェックする方法についてご紹介していきます。
そもそも時給換算する意味は?
本来、正社員であろうとパートであろうとアルバイトであろうと、時給が最低賃金を下回ることは本来であればあってはなりません。
これを最低賃金制度と言います。これは国が定めた最低賃金法に基づき、企業は従業員にその最低賃金以上の時給を支払わなければならないという制度です。
この制度は産業や職種は関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されるため例外はありません。つまり、あなたの時給がその最低賃金を下回るのであれば、それは違法であるということになるのです。
万が一それが明るみに出た場合、企業は罰金を支払うこととなります。それでも改善が見られない場合は、最低賃金法違反容疑で書類送検され、厚労省のHPで社名が実名公表されます。
なお、ここで言う「最低賃金」は全国一律ではなく都道府県によって異なります。
各都道府県の最低賃金については後程ご紹介しましょう。
送検されると所謂ブラック企業リストにめでたく掲載される訳ですねww
時給換算の方法
まずは以下の4つの情報を揃えます。
- ①1年間に得た給与額
- ②除外される手当の金額
- ③1年間の労働日数
- ④1日の所定労働時間
厚生労働省の最低賃金制度に関する情報の中に、最低賃金の対象となる賃金は毎月支払われる基本的な賃金=基本給・諸手当(職務給など。交通手当などは除く)と記載があります。賞与、残業内などの所定外手当も最低賃金の対象となりません。
ですから、計算する際は、給与全額ではなく、その額から下記の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
最低賃金の計算には残業時間は関係ないのだね。サービス残業とか残業時間が多いというのはまた別の問題ということ!
これらの情報を揃えたら、下記の数式にそれぞれを当てはめて計算してみてください。
①-②=★
★÷③=▲
▲÷④=最低賃金の対象となる時給
(なお、これはSEやプログラマーに適用される一般的な月給制の方のケースです。歩合給制等の場合は、厚生労働省のホームページに詳細な計算例が紹介されているので参考にしてみてください。)
これではちょっと分かりにくいと思いますので、事例を挙げて計算してみます。
事例1
東京都内の会社に勤めるプログラマーAさんの1カ月給与の例です。
基本給 | 170,000円 |
職務手当 | 25,000円 |
通勤手当 | 5,000円 |
家賃手当 | 20,000円 |
時間外手当(残業代) | 50,000円 |
1か月の給与合計 | 270,000円 |
これに加えて、ボーナスが、30万円ありました。また、③1年間の労働日数は250日、④の所定内労働時間は8時間です。
まず、1か月で計算します。職務手当を除いた手当を給与合計から引きます。
27万円ー(5千円+2万円+5万円)=19万5千円
これを時間給に換算します。
(19万5千円 × 12か月)÷(250日 × 8時間)=1,170円
となりました。これを最低賃金と比較します。
結局、ボーナスは含まれないんだね。てか、俺より時給多いかも・・・
時給を最低賃金と比較する
では自分の時給がわかったところで、それが現在働いている都道府県の最低賃金と比較した時にどの程度のものなのかを調べてみましょう。
全都道府県の最低賃金の一覧は、厚生労働省ホームページの地域別最低賃金の全国一覧に掲載されていますので、ここでは政令指定都市がある県に限定してご紹介します。
平成30年 | 平成29年 | |
北海道 | 835円 | 810円 |
宮城県 | 798円 | 772円 |
東京都 | 985円 | 958円 |
埼玉県 | 898円 | 871円 |
千葉県 | 895円 | 868円 |
神奈川県 | 983円 | 956円 |
新潟県 | 803円 | 778円 |
静岡県 | 858円 | 832円 |
愛知県 | 898円 | 871円 |
京都府 | 882円 | 856円 |
大阪府 | 936円 | 909円 |
兵庫県 | 871円 | 844円 |
岡山県 | 807円 | 781円 |
広島県 | 844円 | 818円 |
福岡県 | 814円 | 789円 |
熊本県 | 762円 | 737円 |
(政令指定都市の最低賃金一覧 出典:厚生労働省ホームページ)
上記で計算したAさんの時給1,170円は、東京都の最低賃金985円と比較すると、上回っていることが分かりました。少なくても最低賃金上の問題はないということになります。
なお、最低賃金は、平成17年ごろまでは横ばいの推移でしたが、平成18年を境に全国で最低賃金は年々上昇傾向にあります。
今年度は全国平均27円の過去最高の最低賃金引き上げとなるそうです。
時給が最低賃金を下回るケースとは?
上記を見ると、よほどのことがない限り、時給が最低賃金を下回ることは無いような気がします。
SEやプログラマーの場合、より身近な問題は、残業代の未払いや過労死かもしれません。
しかし、所謂ブラック企業に勤めている場合、SEやプログラマーでも、時給が最低賃金を下回るケースがあり得ます。
それは、会社が固定残業代を導入している場合です。
以下のケースを見て下さい。
事例2
東京都内の会社に勤めるプログラマーBさんの1カ月給与の例です。上記Aさんとの1か月の給与は同じですが、基本給が13万円と、Aさんの17万円より4万円低く、固定残業代で9万円があることが違っています。なお、会社からは固定残業代は80時間分(!)と説明されています。
基本給 | 130,000円 |
職務手当 | 25,000円 |
通勤手当 | 5,000円 |
家賃手当 | 20,000円 |
固定残業代 | 90,000円 |
1か月の給与合計 | 270,000円 |
Aさんの時給を計算してみます。
27万円ー(5千円+2万円+9万円)=15万5千円
(15万5千円 × 12か月)÷(250日 × 8時間)=930円
計算をするとAさんの時給は930円となり、東京都の最低賃金である985円を下回ってしまいました。
このように、固定残業代で見せかけは給料を高く見せている場合、最低賃金を下回ることがあります。言い方を変えると、固定残業代とは支払う残業代の上限を違法に決めてしまっているということなのです。
更に、この固定残業代ですが、80時間で割ると時給は1,125円と計算され、割増賃金の1.25倍分を割り戻すと、なんと900円となります。従って、残業代も最低賃金を下回ることになります。
固定残業代には恐ろしい数字のトリックがあるんだね。てか、残業80時間って過労死ラインですな。
最低賃金を下回るならば今後の身の振り方の検討を
ご自分の住む都道府県の最低賃金と比較して、先ほど計算した結果はいかがでしょうか。
もし最低賃金を下回るのであれば、勤務先はいわゆるブラック企業かもしれません。
会社の業績は良いとは思えない、所定労働時間の8時間を超え、とにかく残業が多い、残業代がもしなくなってしまったら生活が苦しくなるかもしれないと考えている方は、今の会社のままでは今後も基本給が上がる可能性は低いといえます。
もしそれに当てはまるようならば、真剣に転職も検討すべきです。
一方で会社の業績は上向き傾向であるにもかかわらず、自分の給与が上がらないということであれば、自分自身のスキルアップをする必要があるかもしれません。
自分に何が不足していて給与が上がらないのか、どうすれば今後の給与アップが望めるのかということを上司に相談してみましょう。
相談すること自体が難しい環境だという場合も転職を検討する必要があるでしょう。
転職エージェントに相談して、自分自身の市場価値を知り、それを活かせる場に身を置くということも解決策の一つです。
仕事を通じて得られるものはお金だけではありませんが、今の生活を維持していくためにはなくてはならないものです。将来に不安を抱いている方は、自分自身が最低賃金を下回るような劣悪な環境で働いていないか、一度立ち止まり客観的な数字からも判断してみてください。