プロジェクトのうち47.2%が「失敗」。
日経コンピュータの2018年調査(サンプル数1745件)によると、上記のような衝撃的な結果が出ています。
もちろん、失敗は即「炎上」と言い切れる訳ではありません。開発は無事に終わったが、期待した効果が出なかったというケースも失敗に含まれるからです。
しかし、失敗プロジェクトのうち中断されたり大赤字となっているものは、ほぼ100%炎上していることは疑いようのない事実です。
そこら中のプロジェクトが炎上しているのが日本の現状と言えるかもしれません。
もはや、エンジニアも歩けば炎上プロジェクトに当たる・・・と言っても過言ではないでしょう。
さて、あなたが現在身を置いているプロジェクトは、以下の項目にどのくらい当てはまりますか?
2、3つ当てはまるようであれば、既にプロジェクトは炎上中であると考えられます。
- PM(プロジェクトマネージャー)のマネジメントが機能していない
- チームリーダーが指示を正確に出せていない
- 残業、終電、休日出勤は当たり前
- 仕様が分からない、何を作っているのかよくわからない
- 納期に間に合わせることに必死
- 有識者がおらず、質問できない、誰も分かっていない
- クライアントとコミュニケーションが取れない
軽度の炎上であれば数項目ですが、大炎上となればすべての項目が当てはまる状況になっているはずです。
炎上プロジェクトは普通のことがまかり通らない状態です。
ある意味チキンレースであり、進も地獄、止まるも地獄です。まさに死の行軍(デスマ)と言われるゆえんです。
このような状況下では、体を壊しかねない無理な長時間労働と、上司などの理不尽な言動に晒されますので、心も体も甚大なダメージを負います。
そのため炎上プロジェクトに当たってしまったら、沼にはまってしまう前に対策を考えておくことが重要です。
ここでは、炎上プロジェクトから逃げる方法、その方法を取るべき理由などについてご紹介します。
Contents
プロジェクトが炎上するのには共通の要因がある
炎上プロジェクトは紛れもない人災です。その要因の多くは以下のような共通点があります。
- 要件定義が不十分。仕様書が存在せず、全体像を把握できている人間がいない
- クライアントの要求が無理難題、理不尽
- 上司が人間的におかしいと思う点がある
- PMやリーダーが早々に離脱してしまった
- 工数の見積もりが甘く、どう考えてもスケジュールに無理がある
- 有識者がいないのに新しい技術を導入しようとしている
- クライアントや協力会社とコミュニケーションが取れない(Microsoftもプロジェクト失敗の要因として「コミュニケーションの崩壊」を挙げています)
- 品質管理やルールが異常に細かすぎ、余計な作業が多い
このような事象が起きている場合、一エンジニアが頑張ったところで阻止することは極めて困難です。
最終的にマネジメント層や会社が火消しの行動に出てくれない限り、確実に炎上します。
ただし、一社員でも上司に「炎上しそうだよー」というアラートを出すことはできます。
炎上間際のプロジェクトでは、PMやリーダーもパニックになりかけで、正しい判断が出来なくなっていることが多々あります。
そこで現場の人間がアラートを出し続けることは、上の人間が炎上リスクを察知する大切なきっかけとなるのです。
そこで火消しの対応が出来れば、炎上は最小限で押さえることが出来るかもしれません。
若しくは、自分だけでも逃げ出せるかもしれません。
そして、上の項目の中で特に注意してほしいのが、上司の問題です。
上司から与えられるストレスはとても大きな影響があります。
無茶な仕事を振っているのに、できなければ罵倒する…いわゆるパワハラ状態です。
労基署などに寄せられた相談の件数トップは「いじめ・嫌がらせ」が25.5%でトップです(厚労省の令和元年データより)。
この殆どが上司からのものであることは容易に想像に難くありません。
炎上している事実を放置し、無理な仕事量を振ってくるような場合は、自分の心身を病む前に逃げることを考えておいた方が良いでしょう。
上司や会社が何も対処しないのであれば、プロジェクトが炎上する前に逃げの一手を打つことも炎上プロジェクトから逃げる一つの方法です。
炎上プロジェクトから逃げる方法
炎上の最中のプロジェクトから逃げる方法は、基本的に退職一択です。
休職という方法もありますが、エンジニアをこき使うような会社に復職すれば、同じ轍を踏む可能性も十二分にあります。
よって、この記事では炎上プロジェクトから逃げる方法として、基本的に退職をおすすめします。
「そんなに簡単に退職なんてできるわけない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
退職という方法は一見過激に見えるかもしれませんが、なぜ退職を逃げる方法とするのかを順を追って説明します。
炎上プロジェクトから逃げてもいい理由
正当な退職は法律的に問題ない
会社の社員は、退職届を出した後、法律や就業規則に定められた日数を過ごせば、確実に退職することができます。
訴えられることはありませんし、損害賠償を請求されることはありません。
これは、SES会社であっても同様です。
一人辞めるのであれば、別の一人を代わりに投入すればいいだけです。
これはSES契約、請負契約、いずれにしても、法律上エンジニアの選択する責任はSES会社にあるからです。
ですから、辛いなと思ったら退職届を出してしまいましょう。
仮に破り捨てられても大丈夫です。内容証明郵便で出すことで退職の意思を示したということにできますし、労基署に相談することもできます。
こちらの記事でもバックレで問題がないかを検討していますので、もしよかったら参考にして下さい。
社員は投入されるプロジェクトを選べない
仕事なのに「逃げる」のは良くないのでは…と悩む方も多いと思います。
確かに、普通の仕事をしていて、振られた仕事が好きではないから、ちょっとだけボリュームが多くてしんどいからと言って、仕事を投げ出して逃げるのは社会人としてはアウトです。
しかし、全ての責任が自分にあると思うのは、メンタルにあまり良くない影響をもたらします。
抑うつ傾向にある人は、何かにつけて自分のせいだと思いがちですが、システム開発の現場ではこのような思考を持っていると確実に病みます。
そもそも多くの場合、社員は投入されるプロジェクトは選べません。
もちろん元請のベンダーに高く評価され、直接打診が来ることもありますが、当の本人が管理職でない限り、最終的に判断を下すのは上司であり、会社です。
多くの会社は単純に月単価が高いところに社員を投入しています。
プロジェクトを選べないエンジニアに責任があるはずもありません。
仮に選んだ先だとしても、プロジェクトが炎上することを予見することは困難ですから、気にすることはありません。
何よりも守るべきは自分自身
結局のところ、人間は体が資本です。
炎上プロジェクトに身を置いて、過労で体がボロボロになってしまったり、鬱を発症してしまっては元も子もありません。
鬱を患い精神的にも限界を迎え、自ら命を絶つような結果に至ることだけは、絶対にあってはならないことです。
そして、そうなってしまっても会社は助けてくれません。
社員を大切にしてくれない会社に、自分の体や精神を犠牲にしてまで貢献しても、自分に返ってくる見返りは皆無です。
朝起きて、三食摂り、お風呂に入って、夜にはベッドに入るという、人間として最低限健康な生活を送ることを大切にしてください。
会社のために命を懸けるなど、論外です。退職という選択肢を取るべきです。
炎上の責任は社員ではなく会社にある
繰り返しになりますが、そもそも炎上する状況を作ったのは会社です。
炎上してしまったら、本来会社が責任をもって対処しなければなりません。
劣悪な環境では、ろくな対処もせずに現場に責任転嫁するようなケースもありますが、関係ありません。
納期を守らなければならないのも、プロジェクトを遂行しなければならないのも、結局のところ会社です。
例えば現場の一社員が退職という手段で逃げたとして、プロジェクトは頓挫するでしょうか。
答えはNOです。
炎上プロジェクトでPMやリーダーが突然辞めて消えてしまうことはよくあることですが、辞める時に会社から叱責されることがあったとしても、彼らが責任を負うことなど一切ありません。
万が一プロジェクトが頓挫したとしても、逃げた個人に責任を問うことなどあり得ないのです。
クライアントとの訴訟問題に発展したとしても、その責を負うのはあくまで会社です。
自分が無責任な辞め方をすることで、会社に迷惑をかけてしまうかもしれないと不安を感じ、逃げることに戸惑っているならば、その心配は不要です。
大切なのはあくまで自分自身、退職して逃げることは無責任ではありません。
炎上プロジェクトから逃げられない人には共通の特徴がある
炎上プロジェクトに出くわしてしまい、その泥沼から抜け出せなくなってしまう人には共通した特徴があります。
- 責任感が強い
- 生真面目
- 物事を一人で抱え込みやすい
- 人に気を使いすぎてしまう
真摯に仕事に向き合う姿勢は、上司や会社から高い評価を受けますが、これを炎上プロジェクトでも同じようにやってしまうと、自分の首を絞めることになります。
上でも書いた通り、炎上中は普通の状態ではありません。
人手が足りない、回らないとなれば、仕事を真面目にこなす人間はどんどんタスクを押し付けられ、炎上の沼にはまってしまうのです。
パワハラ気味の上司にとっても格好の餌食となってしまうでしょう。
さらに、この特徴は鬱になりやすい人の特徴とも重なっています。
炎上プロジェクトからなかなか逃げられない人は、鬱になりやすいリスクも伴っているため、我慢しすぎずに逃げるという選択肢があることを認識し、体を壊す前に逃げることを検討するようにしましょう。
逃げる前にやっておくべきこと
退職して逃げたとしても、心身を壊していなければ次の仕事は案外早く見つけられます。
しかもこれまでの経験から、どんな会社を選ぶのが安全なのか、ある程度の見る目も養われているため、焦らずやれば転職に失敗することはあまりありません。
スムーズに次の仕事につなげるために、退職して逃げる場合に事前にやっておいた方が良いことをまとめてみます。
勤務時間の記録を残しておく
退職前の3か月間の勤務時間の記録を残しておきましょう。
退職後、ハローワークに行って失業手当の手続きをしますが、その際にこの記録があることによって、特定受給資格者として認定してもらうことが可能です。
特定受給資格者とは、下記の通りです。
離職の直前 6か月間のうちに 3月連続して 45時間、1 月で100 時間又は2~6月平均で月80時間を超える時間外労働が行 われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所 において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
この資格を得ることが出来れば、自己都合退職であっても会社都合退職と同じタイミングで失業手当が給付されます。(本来自己都合退職の場合は3か月間給付なし)
口頭では認定されないため、タイムカード、賃金台帳、給与明細書といった、勤務時間がわかるものを確保しておきましょう。
念のため手帳などにもメモを残しておくことをおすすめします。
転職の準備をする
プロジェクト炎上中に転職活動をすることは、なかなか困難です。
体にも心にも余裕がない中、面接を受けたとしてもうまくいくイメージはあまり持てません。
そもそも面接に行く日程を確保することが極めて難しい環境です。
そんな中でできることの一つが、転職サイトに登録することです。
転職サイトに登録すると、希望や経験に沿った求人の紹介メールが届いたり、求人を眺めることができます。
スカウトサービスを使えば、自分のスキルで応募できる求人がこんなにあるのかと、少しホッとする材料になったりもするでしょう。
また、事前に登録しておくことで退職後スムーズに転職活動を開始することができるので、退職前に複数の転職サイトに登録しておくことをおすすめします。
エージェントサービスに登録すれば、退職後にキャリアコンサルタントのサポートを受けながら就職活動を進めることも可能です。
とりあえず逃げてしまったのであれば失業保険(失業手当)を申請する
とりあえず逃げてしまったのであれば、次の仕事を見つけるまでの間の生活費を確保しておく必要があります。
仕事をしなくても当面の間は生活をしていけるようにしておかないと、転職先も余裕を持って選べなくなってしまいます。
社員であれば、雇用保険(失業保険)に加入していますから、今まで貰っていた日額の50%~80%程度は貰えます。
手続きはハローワークにて行います。
炎上プロジェクトで負った傷を癒すために是非活用しましょう。
まとめ
上記をまとめます。
- 炎上最中のプロジェクトから逃げるならば退職一択
- 炎上するプロジェクトには共通の要因がある
- 炎上プロジェクトから抜け出せない人には共通の特徴があり、鬱になるリスクも高い
- 炎上プロジェクトから逃げることは無責任ではない
- 逃げる前に勤務時間の記録と転職サイトに登録を済ませておく
精神的にタフな人は、炎上プロジェクトを学びの機会として、ポジティブに捉えることもなくはありません。
とはいえ、そういった人は圧倒的少数です。炎上プロジェクト入ったことで病んでしまう人が大多数でしょう。
長引かない炎上であれば、自分のタスクを黙々と、淡々とこなしていくことで乗り切れることもあります。
人間は期限が決まっていれば何とか我慢できるものだからです。
しかし、大炎上してしまい、終わりが見えないという状況では、心身にかかるストレスは膨らみ続けるでしょう。
その結果、体を壊したり、精神を病んでしまい、人生を大きく狂わされてしまうのは言わずもがなです。
ですから、身の危険を感じたら退職という方法で逃げることを考えてください。
自分だけ逃げることに強い罪悪感を抱く方もいると思いますが、他人はそこまで自分以外の人間を気にしないものです。
最優先すべきは自分の心身の健康であり、会社でも会社の人間ではないということを念頭に置き、自分が壊れてしまう前に炎上プロジェクトからは逃げましょう。