SES企業に勤めているエンジニアにとっての「自宅待機」はただの休暇?それとも戦力外通告?
意外と多くの方が自宅待機の本当に意味について知らないと思われます。
この記事では、SES会社におけるエンジニアの自宅待機について、その法律的な性質や給与についてまとめてみます。
今現在自宅待機を指示されているエンジニアの方、自宅待機を指示されたばかりの方に是非参考にしていただければと思います。
Contents
自宅待機は「休業」扱い
一般的には常駐先の案件が決まらず、会社からの指示で自宅にて待機することを指しますが、法律的には「休業」という扱いになります。
休業は以下のように「休職」と明確に異なるものです。
休職 | ケガや病気など従業員の自己都合による休み |
休業 | 会社都合による休み |
この会社都合とは何か?というと、一般的には「会社の経営状態が悪化している/しかねないので、人件費をちょっとでも削減したい」を指します。
SES会社の場合、
- 次の投入先プロジェクトがなかなか見つからない
- SIerからの仕事が減り、雇用調整助成金を貰って雇用を維持している。
のような場合に、自宅待機を命じるケースが多く見られます。
また、退職勧告とセットで次の職場が見つかるまでの猶予期間として自宅待機を命じるケースもあります。
自宅待機の原因とは?根本原因はSES会社のビジネスモデル
SES会社に営業力が不足している
自宅待機が生じるのは、一義的にはSES会社の問題です。
SES企業の中でも、大手とコネクションがある優良企業と、特にコネクションもなければ営業力もない中小、ベンチャー企業でははっきりと明暗が分かれます。
営業力のある企業であれば、案件の受注はできるため社内待機程度で済むかもしれませんが、営業力がなければ案件の受注が無い期間が長期に渡って続きますので、エンジニアは自宅待機を余儀なくされる状況となります。
特にSES企業の営業は、若手かつ未経験者の採用も多いため、営業の素養があまりない人材が多いという傾向もあります。
エンジニア自身に問題があるケースもある
常駐先の面談に落ちてしまい、自宅待機となるケースは良くあります。
残念ながらこの理由による待機はエンジニア自身に原因があるため、次につなげるためにも対策をする必要があります。
客先常駐の面談で不合格となる原因はシンプルに3つで、
- やる気が見られない
- コミュニケーション能力の欠如
- スキル不足
というものが挙げられます。
SESでなくとも、今後働いていくためには必ず求められることであるため、対策をしなければ待機が続き、最悪会社側から退職勧告を受けることになりかねないので要注意です。
根本的な問題はSES会社のビジネスモデル
エンジニア人件費は基本的に固定費です。
SIerはエンジニアの数を一定の数にとどめ、固定費を増やさないようにしています(たまに、希望退職者を募る時もあります)。
これは、リーマンショックやコロナなどの社会的な経済環境の悪化が起きて、売上が大きく減った場合に大きな赤字になることを防ぐためです。
そのためプロジェクトで人手が不足した場合、他社にエンジニア派遣を要請することになります。
つまり、エンジニアの人件費を変動費化しているのですね。
そして、これをビジネスチャンスとしてみたソフトウェアベンダーが、自社でエンジニアを雇って派遣するようになる訳です。
これが、SES会社の始まりですね。
そして、SES会社は自社でエンジニアを雇う訳ですから、エンジニアの人件費は固定費となります。
自らリスクを負ってエンジニアを抱えている状況なのですね。
つまり、プロジェクトの数が減れば、エンジニアの仕事がなくなってしまうというのはごく自然のことであり、ビジネスモデル自体の宿命ともいえるものなのです。
それにも関わらず、エンジニアに責任を押し付ける形で自宅待機(休業)をさせるという点に非常に大きな問題があります。
最も問題なのは、自宅待機になると給与が下がるという点です。この点についてより詳しく説明していきます。
自宅待機はエンジニアに支払う給与を減らすためのもの
それでは、SES会社はなぜ自宅待機をさせるのでしょうか?社内待機では駄目なのでしょうか?
これには勿論理由があります。
それは、SES会社にとってエンジニアの給与をカットできるメリットがあるからです。
自宅待機中の給与は通常の6割程度になる
上で書いた通り、自宅待機期間中は「休業」扱いとなりますから、「休業手当」支給の対象となります。
労働基準法第 第26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければならない。
これは、法律による最低限の金額です。
本来は就業規則に6割ではなく7割でも8割でも支払うように書くこともできるのですが、そんな素晴らしいSES会社はこの世に存在しません。大体は最低額の6割と書かれています。
なお、上記の「平均賃金」とは、「直前の賃金締切日から遡って3か月間に支払われた賃金の総額 ÷ 期間の総日数(暦日数)」を指します。つまり、基本給だけではなく残業代を含めた総額となります。
いずれにせよ、会社都合にも関わらず、直近の給与の6割しか給与が貰えないということになります。
インターネット上ではよく「給与が40%カットされる!」と表現されるのですが、実際は給与の6割程度の休業手当を貰うことになると言うことなのですね。
社内待機でも給与は減る
なお、自宅待機では勿論、社内待機の場合も給与は減る可能性があります。
会社にもよりますが、「常駐手当」や「残業代」の割合が多い場合です。
これらは、基本給と違って変動費的な性質を持っていますから、仕事がなければゼロになります。
ですから、社内待機になってホッと一息つけたと思っても、知らず知らずのうちに給与が激減している可能性はあります。
自宅待機は勉強の機会?それとも戦力外通告?
自宅待機は勉強の機会にならない
勘違いをしている方が多いと思いますが、自宅待機は勉強の機会ではありません。
現在、雇用調整助成金の教育訓練という制度がありますので、会社としては休業中でも出社を指示して勉強させるということはできるからです。それにも関わらず、自宅待機ということは勉強させる気がないということです。
また、社内待機で勉強させる・ツール等を作らせるという選択肢もあります。スキル見合いが原則のSESビジネスですから、社員のスキルアップは非常に重要です。まともなSES会社であれば、プロジェクトの切れ目で、社内待機させて何かをやらせることが多いです。
なお、自宅待機にした場合、原則として会社から指示や命令することはできません。
そのような自由な状態で、勉強に取り組む人など誰もいないことはみんな知っています。
実際、自宅待機となったエンジニアは勉強などせずに、ネットサーフィンやゲームをして過ごしています。
自宅待機は戦力外通告である
上記のような理由から、自宅待機を命令されるというのは、基本的に退職勧告と言っても過言ではないでしょう。
そもそも一般的には、上司から転職先を探すための準備期間である旨は明確に伝えられます。
とはいえ、そういった直接的な物言いが苦手な上司もいますし、日本の場合は「空気を読め。分かるだろう」という考え方がありますから、ハッキリと物を言わないことも多いですが、普通に考えれば退職勧告以外何物でもないことは分かります。
勿論、転職しないで頑張ることもできるでしょうが、今度は周りの社員の目も厳しくなってきますし、復帰後肩身の狭い思いをすることは間違いありません。
PLは自宅待機をしていたエンジニアよりもバリバリ現場で働いていたエンジニアを選びたくなるのは自然のことですし、復帰自体がそもそも難しくなるでしょう。
劣悪な環境の常駐先から脱出できたエンジニアに話を聞きました
不満を感じた部分はいくつもあり、労働環境がかなり劣悪化している環境でした。まず社内は建築してからかなり期間が経過したビルになっており、薄汚いビルでした。パソコンやその他機器に関しても全然充実していなかったので、開発やテスト業務をするのが難しかったです。更に客先常駐先の社員も最悪で、こちらが一生懸命仕事をしているにも関わらず、罵倒してくることが多いです。
かなり厳しい環境の中で仕事をしているにも関わらず、所属していた会社も全然評価してくれなかったです。特に給料が入社した時と比較して、全然高くならなかったのでこのままではよくないと感じ、転職を決意しました。
客先常駐している時は、客先常駐している社員の顔色を確認しないといけなかったので、精神的に辛かったです。しかし自社内開発SEとして仕事をすることで、客先常駐のことを気にせず、開発に集中できたのがよかったです。
また分からない部分が発生した時は、すぐに質問できるのも良い部分です。更に残業が発生した時は、きちんと申請することで認めてもらえるのが嬉しいです。客先常駐先によっては、残業申請をしても認められない場合がありました。とても歯がゆい気持ちで仕事をしていたのですが残業代をしっかりと支払ってくれるIT企業に転職したので、その部分も気にしないで済むようになりました。
その他にも客先常駐先では、中々自分の意見を伝えるのが難しいところがありました。しかし自社内開発SEでは、自分の意見もある程度伝えられるようになり、一人のSEとして貢献できるのでやりがいを感じやすいです。
また転職エージェントに登録することで、非公開求人を多く紹介してもらうことができました。更に履歴書や職務経歴書のチェックなども実施してくれたので、安心して転職活動を実施できてよかったです。
その他にもこの転職エージェントは、質の高いSE求人を紹介してくれたので、こちらが色々と厳選していき、応募することで内定を獲得することができました。
まとめ
上記をまとめます。
- 自宅待機は休業である
- 自宅待機の根本原因は、SES会社のビジネスモデルである
- 自宅待機で給与は6割になる可能性がある
- 自宅待機は戦力外通告である
このように、自宅待機はエンジニアにとって歓迎すべきものではなく、退職勧告に等しいものです。
もしあなたが自宅待機を命じられたのなら、今の会社でのキャリアを再考するきっかけとして捉えるべきかもしれません。